秋の日は暮れるのが早い。
調理実習室には落ちかけた太陽の薄橙の光が低い角度で差し込み、一人でケーキ作りに熱中していた苑田鈴の横顔を照らしていた。室内はしだいに暗くなってきたが、ちょうど手許に日が当たっていたために鈴はそれに気付かず、黙々と作業を続けていた。
と、その時、実習室のドアを開けて片桐柊也が入ってきた。
整いすぎなくらいに端正な彼の顔だち、引きしまったまなざしと口元は、見る人によっては冷たい印象を与え、ともするとクラスメイトたちが彼を遠ざける原因にもなっている。しかし、そんな彼の表情が、教室の奥で調理器具と悪戦苦闘している鈴に目をとめると、とたんに和らぎ、人懐っこい笑顔を浮かべた。
「なんだ、ここにいたのか。いっしょに帰ろうと思って捜してたんだ。」
「あ、片桐君……」
声をかけられた鈴も、彼の姿を認めると作業の手を止め、答える。
「ケーキ作りの練習してたんだ。私のお母さん料理へたっぴだから、先生に教えてもらってたの。片桐君、甘いもの好きだから、食べてくれたらうれしいな、と思って……。」
「でも、なかなかうまくできなくって。やっぱり料理の才能無いんだな、私……」
「そんなこと気にするなよ。苑田の作ったものなら、全部平らげてやるからさ。何でも持ってこいよ」
「片桐君……」
自分の未熟さを認めてくれて、それごと自分を包んでくれる、少年の大きな愛情を感じて鈴は頬を染めた。
「でも胃薬もいっしょにな」
「ひっどおい!」
むくれて怒る鈴の様子がおかしくも可愛くもあり、片桐は声を上げて笑った。
「で、先生は?」
「なんか用事があるって、先に帰っちゃったよ。火の始末と後片付けだけちゃんとしときなさい、って。」
「へえ……信用されてんだな」
「優等生ですから」
「嘘つけ」
二人は小さく笑いあって、それから後片付けを始めた。
食材は鈴が自宅から持ってきたものだったので、封をしてバッグにしまう。調理器具は片桐が洗って、保管場所を知っている鈴が教室の壁に作り付けられた棚に戻していった。
ボウルをしまう棚は高い位置にあって、鈴が背伸びしてもわずかに届かなかった。
「んっと、もう少し……」
「俺がやるよ」
後ろから片桐が手を伸ばし、ボウルを棚の上に置いた。
「あ、ありがと……」
偶然にも、片桐が鈴の真後ろに立ち、二人は密着するようなポジションになった。
背中から伝わる、彼の体温。鼓動。
(うわーっ……こ、この体勢って、ちょっと……)
思いがけない状況にうろたえて、全身がかあっと熱くなり、心臓が早鐘を打ちだす。しかし、不意の接触に平常でいられなくなったのは片桐も同じだった。
「俺が本当に食べたいのは……」
片桐が背中から鈴を抱きすくめた。
「え……?片桐くん?」
男の大きな手のひらが、鈴のまだ幼い胸のふくらみに当たる。
驚きと恥ずかしさで、鈴のからだはびくん、とふるえ、反射的に手足をこわばらせる。
「苑田、俺もう、我慢できない」
片桐が耳もとでささやく。
丸くて、かわいらしい耳が根元まで真っ赤になった。
そっと鈴のうなじに口づける。セミロングの髪を左右に振り分けてカラーゴムでくくっていたため、鈴のうなじはさえぎるものがなく、無防備だった。
「あっ……」
鈴はただびっくりして固まっているだけなのに、それを拒まれていないと解釈した片桐は安心して、指先で鈴の胸許を軽く撫ではじめる。
「だ、だめ……片桐君、人が来ちゃう」
「大丈夫だよ、もう部活の連中はみんな帰ったし。おとなしくやれば、誰も来ないって」
腕の中で小鳥のように身を縮めてとまどう少女の様子が楽しいらしく、片桐の指が胸のふくらみの上をイジワルに動き回る。微妙な部分をくすぐられて、鈴はもうどうしていいかわからなくなってしまう。
「苑田、こっち向いて」
言われたままに振り向くと、片桐が唇を求めてきた。
二人がつきあうようになってから、これが何度目のキスだろうか。でも、今日のキスは、今までのと違う。
少年のクールな性格そのままの、ためらいがちにそっと触れてくるようなキスじゃなく、荒っぽくて、執拗で、自分の全てをむさぼるようなキス。
唇を吸われ、なぶられ、こじ開けられる。舌が口腔内に侵入してくる。
「む……あふ……」
(怖いよ、片桐君……)
思わず片桐の腕にしがみつく鈴。しかし、そんな少女の心の畏れに気付かぬのか、片桐はますます激しく鈴の甘い舌をなぶり、幼い乳房を責め続ける。
鈴はもう、立っていられなくなって、ずるずると片桐の腕の中に崩れ落ちていった。
「ふう」
ようやく片桐は唇を離した。
教室の床に横たえられ、しどけなく腕を曲げ、目をつむり、肩で息をする愛しい少女。いたわるように優しく、その上気した頬にもう一度口づける。
片桐はそれから、セーラー服の裾の中に手を差し入れてきた。
細いウエストをなでながら、裾をまくり上げてゆく。ついにブラジャーがあらわになった。
夕暮れの紅い光に柔らかく満たされた調理実習室の中で、その純白のブラジャーだけがほの白く浮かび上がる。それは鈴の素朴さをそのまま形にしたようなシンプルなデザインで、胸元の小さなピンク色のリボンだけが唯一の飾りだった。AAサイズのひかえめなカップに、鈴のまだ薄い乳房はすっぽりと包み込まれていた。
(ああ……片桐君、なにするの?)
未知の体験への恐怖。性と快楽への興味。下着を見られてしまった羞恥。いくつもの感情が鈴の心の中で沸き上がり、渦巻き、わんわんと鳴り響いた。結果、鈴はぴくりとも動けず、片桐のなすがままになるしかなかった。
片桐の手が背中に回った。ブラのホックを外そうとしているんだな、と鈴は気付いた。少し手こずっているようだったが、ついにそれは外された。
今まで誰にも見られたことのなかった鈴の乳房。それはまだ成長途上で、ひかえめな盛り上がりがあるだけだったが、その突端に乗るぷっくりとふくらんだ乳首は淡いさくら色で、その清楚な色彩は既に男性を惹き付ける魅力を放っていた。
「苑田のからだ、きれいだ……」
片桐の指がその乳首に触れる。
「あっ!」
しびれるような快感が走り、鈴は思わず声をあげる。
親指と中指で乳輪を優しくつまみ、人さし指の腹で中学2年生の敏感な乳首をさする。
「ひゃっ……っあ……」
電流のように刺激が全身を走り抜け、鈴は息をのみ、さらに体を硬くする。
片桐は鈴の胸に顔をうずめ、乳首を口に含む。鈴の躯が跳ねる。
鈴のほっそりした全身をなで回しながら、左右の乳首を交互にちゅっ、ちゅっと吸う。
「あっぁ……片桐くぅん……こんなとこで……ダメえぇ……」
鈴は恥ずかしくなって訴えるが、片桐は聞き入れてくれなかった。
「苑田のおっぱい、とってもかわいい……」
クラスメイトと比べても明らかに発育が遅れている小さなバストは、鈴にとってはコンプレックスだった。そんな自分の胸をほめてくれて、求めてくれる……恥ずかしくもあり、うれしくもあった。
赤ん坊のように自分の乳房を吸う片桐の髪をなぜてあげたい気持ちになったが、それほどの余裕は鈴にはなかった。少年の荒々しい愛情表現にただ身を任せるばかりだった。
ひとしきり苑田の胸を遊び尽くして満足した片桐は、スカートに手をかけた。
紺のスカートを少したくしあげ、すべすべした鈴の足をなぜる。
「やっ!……ダ、ダメだよ!」
いくら大好きな男の子の手であっても、処女の鈴にとって、スカートの中への侵入は本能的なおびえを呼び覚ますのだ。
「片桐君……おねがい」
「ごめん。俺もう、止まらないんだ……苑田の全部を俺の物にするまで、止まらない」
キスで一度鈴の口を封じてから、片桐は鈴の下半身の方にずり下がっていった。
スカートをまくると、その中であたためられていた空気がふわりと浮き上がり、片桐の顔にあたった。それはしぼりたての生乳のような青臭い甘さと芳醇が溶け合った香りがして、片桐の鼻を心地よくくすぐった。
そして、純白の木綿のショーツが片桐の眼前にあった。
その三角の布片に包まれた秘密の部分に、片桐は触れた。
ふっくらした大陰唇を押し、ぷにぷにした肉の感触を楽しむ。割れ目の辺りを縦になぞり、刺激する。
「んっ、あぁ……恥ずかしいよぅ……」
その部分は熱く、すでにじんわり湿り気を帯びていた。
片桐の指が触れるたびに、じぃんとした刺激が快感となって、子宮から沸き上がってくる。オナニーの経験もない鈴は、自分の体の未知の変化にとまどうばかりだった。
片桐も布越しの愛撫では満足できなくなったようだ。ショーツが一気に脱がされ、力の入らない膝を割られた。
「やあっ……見ないでぇ……」
片桐の顔は両足のあいだ、秘密の花園の間近にあり、鈴の、誰にも見せられない、自分ですら見た事のない部分をまじまじと観察された。
鈴は恥ずかしさで顔から火が出そうだった。
まだ薄く、柔らかい陰毛が恥丘の上にほんの少しだけ生えていた。広げられた割れ目の内側、小陰唇はまだ子供のそれのように未発達な形と色をして、寝そべる妖精のようにちょこんとした姿で膣口のまわりをふちどっていた。そして、片桐の愛撫を歓んだ証として、全体がしっとりと露に濡れ、夕暮れの弱い光をうけてキラキラと輝いていた。
片桐にとってそれは、今まで味わったどんな美食よりも食欲をそそるケーキだった。甘そうで、ジューシィで……たまらず彼はむしゃぶりついた。
「ひゃっ!ああっ!」
突然の強い刺激を受けて、鈴の体が弓なりにしなった。
「だ、だめぇ……そこ、汚い、よ……」
(片桐君……そこ、おしっこの場所だよ……それに、それに……今、私のそこ、ヘンなんだよ……)
「汚くなんかない……苑田の体に汚いとこなんか、どこにもない」
「でっ、でも……あんん……」
片桐は自分の言葉に証を立てるかのように、鈴の甘い蜜を飲んだ。じゅるっ、じゅるっといういやらしい音が鈴の耳にまで届く。片桐の舌が小陰唇をこねまわし、陰核包皮の内側でちぢこまっているクリトリスをつつき、神聖な膣口への侵入を試みる。秘密の花園で遊ぶ少年のように彼の舌が鈴の谷間のあちこちを駆け巡るたびに、括約筋がきゅっと収縮し、愛液がとめどなく湧いてきた。
「あっ……あふっ、ん……ああ……ああ……」
未体験の快感の嵐に翻弄され、鈴はもう自分の体を制御できなくなっていた。
鈴のぱっちりとした黒目がちの瞳は宙を泳ぎ、さくらの花びらのように可憐なおちょぼ口から絶え間なくあえぎ声が漏れ、ふっくらしたほっぺたをよだれがひとすじ伝っていた。
その反応に興奮を倍加させられたようで、片桐の舌と唇の動きも荒々しさを増してゆく。
「あっあっ……ひあっ……くっうんっ……」
鈴の頭の中はもう真っ白になって、何も考えられなくなっていた。脳裏のあちこちで虹色の花火がスパークした。
片桐にひときわ強くクリトリスを吸われた瞬間、爆発するような衝撃が沸き上がり、鈴は投げ出され、落ちていった。
「あああっっ!!……ふああっ!……ああっ……」
腰ががくがくとふるえ、両足がびくんと跳ねる。鈴がついに達したことが片桐にもはっきりわかった。
「苑田、イッてくれたんだな、うれしいよ……これからもっといい事してやるから、な」
絶頂の余波でまだ呆然としている鈴の髪をなでながら片桐がささやいた。その言葉の意味を幼い鈴は理解できなかった。
制服のパンツとブリーフをまとめて脱ぎ、ポケットからコンドームを取り出し、もう痛いくらいに充血し怒張した彼の若々しいペニスに装着する。
力なく投げ出された鈴の細い両足を抱え上げ、今さんざんしゃぶり尽くしたその場所に自分の先端をあてがう。
鈴は、まだジーンとしびれて感覚の鈍くなった自分のあそこに、何か今までと違う、不思議な熱さと感触のモノが押し付けられたな、とは思ったけれど、それが何なのかはわからなかった。
ふわっと自分の腰が持ち上げられたその時、それはぐぐっと胎内にめり込んできた。鋭い痛みが走った。
「!?いっ、痛あいい!!」
「ごめんよ、でも、すぐ済むから……」
ようやく鈴は、自分が片桐に何をされたのかを悟った。ついに二人は結合してしまったのだ。
(そんな……片桐君が、そんなこと……?)
保健体育の授業で学んだ程度の性知識しか持ち合わせてない鈴にとって、セックスはまだまだ実感を伴わない絵空事で、結婚した大人たちの世界の事柄だった。まさか、片桐が自分にそれを強いるなど、思いもよらなかった。
しかし、純潔のあかしの裂けた痛みと、グイグイと侵入してくる男性器の熱さと硬さ、その圧倒的な存在感は、これが目を背けようもない現実であることをいやというほど鈴に突き付けていた。
「いっ、いたいよぅ……片桐くん、いたいよう」
「ごめんな、すぐ終わるから、もう少し我慢して」
実際、鈴の幼い膣腔は、片桐の若い肉棒にはきつすぎて、あまり長い間ひとつにつながった感動を味わい続けてはいられそうになかった。もちろん、好きな女の子に痛い思いをさせるのは忍びなかったというのもある。
「苑田、好きだよ、愛してる。一生大切にする……」
なだめるようにささやき、優しくキスをした。
「かたぎりくん……うれしい……」
鈴は一瞬痛みを忘れるほどの幸福感に包まれたが、片桐が抽送を開始すると、すぐに痛みが戻ってきた。
「あっ痛!……やっ……いたっ、あっ………」
片桐は若い男性の力で己の下半身を容赦なく叩きつけ、鈴のきゃしゃな体はがくがくと揺さぶられた。ずり上がって逃れようとしたが、首に腕を回されてがっちりとホールドされると、もう身動きが取れなくなった。
「すげ、苑田の……キツ……気持ち、いい……」
片桐の剛棒が繰り返し押し込まれ、切り裂かれたばかりの処女膜の傷口が痛めつけられる。鈴は必死で片桐にしがみついて、うめき、痛みを訴える。
「も、もう、限界……イクよ、イク……うううっ!!あっ、あっ……」
自分の胎内で暴れていた片桐のものがひときわ深く侵攻した時、それが一瞬むむっとふくらみ、子宮口に何か熱いものを放出されたのを鈴は感じた。
動きをとめた片桐が自分に体を預けてきた。スポーツの後のように深い呼吸を繰り返し、汗を流し髪を乱れさせている片桐の顔を見た時、なぜだか鈴は彼がとても愛おしくなった。彼のものがしだいに小さくなり、ついにぬるりと自分の体から抜けてしまった時、とてもさびしくなって、泣き出してしまった。
そんな鈴を、片桐はやさしく抱きしめ、まぶたの涙を口で吸い取った。鈴の気がおさまるまで、ずっとそうやってなだめ続けてくれた。
いつしか日もすっかり暮れ、教室の二人を夜の闇が包んでいた。

片桐は、鈴を家のすぐ近くまで送ってくれた。
二人はいつまでも離れがたく、路地の最後の角が曲がれなかった。いつまでもとりとめもないおしゃべりを続けていた。
「もう、いいかげん……家の人が心配するんじゃないか?」
「そうだね。すっかり遅くなっちゃったもんね……じゃあ、また、明日」
「また明日も?」
片桐のいたずらっぽい含み笑いの真意に気づいて、鈴は顔を真っ赤にしてうつむいた。
「だっダメだよ!学校じゃ、もう、ダメ……」
「冗談だよ。……なあ、今度の日曜、あいてる?」
「えっ?……うっ、うん!だいじょぶ!」
「そっか。じゃあどっか遊びに行こう?行きたいとこ考えといて。……じゃあ、もう、ほんとに、おやすみ」
「うん……おやすみ」
おやすみのキスをした。ファーストキスの時のような、やさしい、そっと触れあうようなキス。

[終]

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